白内障手術
[2021年07月26日]
当院では、視覚を喪失させる、喪失させる可能性の高い白内障に対して白内障手術(超音波乳化吸引術+人工レンズ挿入術)の実施をしています。
飼い主様、獣医師の方からもよくお問い合わせをいただきますので、下記に白内障手術前に飼い主様にお渡しする説明書の一部を記します。
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白内障手術 インフォームドコンセント
白内障とは、
本来透明である水晶体が、さまざまな原因で変性し、不透明になった状態。
視覚を喪失させるだけでなく進行状態により痛みなど動物に不快感をもたらし、QOLを低下させる疾病。
根治的治療は、手術のみであり、多くの患者の視覚が回復するが一定数の合併症が発生する。
適切な手術時期に行った白内障手術では、視覚回復率は90%。ただし、それでも10%の患者で視覚回復を妨げる合併症が出現します。
主な合併症として、緑内障・網膜剥離・眼内炎があり、重度の場合は視覚回復をしないだけでなく、痛みを伴うため、眼球内義眼などの救済手術が必要なこともある。(約2%)
合併症は、術後すぐに起きることもある。
手術適応
・全身麻酔に耐えうる体力、検査所見であること。(手術前には、全身検査が必要)
・白内障以外に緑内障や網膜変性など重篤な眼疾患がないこと
‐必要に応じて、手術当日に網膜電図検査。
・動物、飼い主様が治療に協力的であること
費用、入院期間
片眼のみ:30万+税 2泊3日
両眼:55万+税 3泊4日
※糖尿病などのコントロールが必要な場合などは加算される。また眼圧上昇などで入院延長が必要な場合もある。その場合、費用も加算される。
スケジュール
・手術当日午前中に来院。
・入院期間は上記。入院中の面会は推奨しない。
・退院後再診は、手術日から7日、14日、21日、35日・・・が基本となる。
・術後3週間はエリザベスカラー着用のため、安静
・術後3週間は、シャンプーはできない。
・術後3週間は、点眼が10回/日
手術方法
・人医療と同様の術式。超音波乳化吸引術 + 人工レンズ挿入
・術前から、もしくは術中の判断で水晶体嚢の不安定さがある場合には、
‐テンションリング挿入 を追加したり
‐水晶体嚢内摘出術 に術式を変更せざるを得ないことがあります。
また、水晶体後嚢が痛んでいる場合には、人工レンズを入れれないことや後嚢切開をする必要があります。
よくお受けする質問
・白内障は再発しますか?
→人工レンズなので再発はしませんが、後嚢が白濁(後発白内障)することは一般的にみられます。しかしながら、視覚障害を起こすことは稀で再手術の必要性はありません。
・今、片眼が白内障なのですが、両眼なってから手術は可能ですか?
→おすすめしません。白内障手術には適期があり、白内障が進行しすぎると水晶体が溶けてきます。そうなると合併症発生率が上昇します。
・初期の白内障と診断されましたが、手術すべきですか?
→おすすめしません。白内障手術は、一定の合併症リスクがある手術ですので、
視覚障害がある、これからすぐに障害は起こりえる場合にのみ行うべきと考えています。
・緑内障や、網膜剥離が起きた場合はどういう治療をするのか
→
緑内障の場合は、軽度の場合は点眼治療。重度の場合は、眼圧を下げるための手術が必要になります。高眼圧が長く続くと、視覚回復が困難となります。
網膜剥離の場合は、極初期であればレーザー治療が奏効する場合がありますが、多くの場合は、治療は困難で回復不能の失明となります。
・白内障手術の経験はどのくらいあるのか
→兵庫県下では、トップクラス。全国でもtop10に入る手術数を有しています。(2020年)
・白内障と同時に歯石除去は可能か
→おすすめしません。眼内への菌の迷入を避けるためです。ただし高齢で麻酔があまりかけれない子は検討します。
・緑内障と網膜剥離以外の合併症は何があります?
→ 角膜内皮障害による角膜混濁。角膜潰瘍、眼内炎が挙げられます。
・白内障手術をしない場合は、放っておいて良いのか?
→ 白内障手術を何らかの理由で実施しない場合でも放置はおすすめしません。
白内障は、進行状態により視覚を喪失させるだけでなく、痛みなど不快感を起こします。
定期的に検査をし、適切な対症療法を行うことをおすすめします。
・高齢でも手術可能ですか?
→ 一般的に高齢である方が、全身麻酔のリスクは上がります。
ただし、全身状態が良く、検査上で問題がなければ可能です。
認知症状などが出ている場合は、白内障手術を行っても期待できる行動様式の改善は認められないことがあるため、当院では15歳までを適応としています。(例外あり)
・糖尿病なのですが、手術は可能ですか?
→ 可能です。ただし、全身状態が悪い場合は血糖値のコントロールなど全身状態の改善が優先されます。 糖尿病性白内障は進行が速いため注意が必要です。
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